lme4でp値が出力されない件と、lmerTestのp値 について

線形混合効果モデルは、現在さまざまな研究で用いられている。Rで線形混合効果モデルを用いた解析に使うパッケージには、lme4パッケージのlmer、nlmeパッケージのlmeなどがある。

lme4 ではp値が計算できない

lme4 を使った線形混合効果モデルでは、係数の有意性を示す検定統計量としてt値は計算されるが、p値はわからない。その理由はDouglas BatesやBaayenらによって詳しく説明されている¹⁻²。その理由のひとつとして、線形混合効果モデルでは正確な自由度がわからないことがあげられていた。

※詳細は、[R] lmer, p-values and all that (ethz.ch)または (R.H. Baayen, et al. 2007)を参照してください。
※t値とp値については、前田泰伸「回帰分析におけるt値とp値の意味について」がとても参考になりました。

代替法の提案

線形混合効果モデルではp値を知ることはできなかったが、これまでにいくつかの代替法が提案されている。

Baayanらは、代替法としてマルコフ連鎖モンテカルロ法(Markov chain Monte Carlo methods、MCMC)を用いたp値の計算を提案している²。しかし、これにはモデルにランダムな傾きが含まれている場合に適用できないという欠点があった。

そこで、Lukeはp値を計算するための様々な方法について、第一種の過誤(Type Ⅰ error)iに考慮したうえで比較、検討した³。

lmerTest

線形混合効果モデルのp値の計算にはRのlmerTestパッケージを用いることができる。lmerTestはlmerパッケージを拡張させたもので、このパッケージを用いることによって平均的なエラー率0.0013でp値を計算できたことが報告されている³。

lmerTestでは、自由度の計算方法としてウェルチ–サタスウェイト(Satterthwait)の近似値を用いている。また、pbkrtestパッケージのKRmodcomp関数を用いれば、 ケンワードロジャー(Kenward-Roger)の近似値を用いて分散分析(ANOVA)の要約表のような表を得ることができる。


注釈

i 第一種の過誤(Type I error):帰無仮説が本当は正しいのにも関わらず、誤ってそれを棄却してしまうこと。

略語

  • ANOVA(analysis of variance):分散分析
  • MCMC(Markov chain Monte Carlo methods): マルコフ連鎖モンテカルロ法

参考文献

1 Douglas B., [R] lmer, p-values and all that, Fri May 19 22:40:27 CEST 2006., https://stat.ethz.ch/pipermail/r-help/2006-May/094765.html. 2021.8/12 access.

2 R.H. Baayen, D.J. Davidson, D.M. Bates, Mixed-effects modeling with crossed random effects for subjects and items, Journal of Memory and Language, Volume 59, Issue 4, 2008, Pages 390-412, ISSN 0749-596X, https://doi.org/10.1016/j.jml.2007.12.005.

3 Luke SG. Evaluating significance in linear mixed-effects models in R. Behav Res Methods. 2017 Aug;49(4):1494-1502. doi: 10.3758/s13428-016-0809-y. PMID: 27620283.

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